運命の電話で出会ったパトリック・カントレーとキャディの絆【舩越園子 ゴルフの泉】

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米ツアー2020-21シーズン年間王者のパトリック・カントレー 写真:Getty Images

2020-21シーズンの年間王者に輝いたパトリック・カントレーと彼のバッグを担いでいる相棒キャディが出会うまでには、長いストーリーがありました。今回はカントレーとキャディの深い絆にまつわるお話です。

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不幸な事故を経て出会った2人

 2014年からアメリカツアーにデビューしたカントレーは、翌年から腰の故障で2シーズンを棒に振り、2017年に公傷制度を利用して戦線復帰しようとしたのですが、その矢先、カントレーのそれまでの相棒キャディが交通事故で亡くなってしまいました。

 相棒キャディを失い、ショックと悲しみに暮れていたカントレーに代わって、彼のマネージャーは方々へ電話をかけ、カントレーの新たな相棒キャディを必死に探したそうです。

 「ある日、突然、運命の電話が鳴った」

 そう振り返ったのは、そのときから現在に至るまで、ずっとカントレーの相棒キャディを務めているマット・ミニスターです。

カントレーを支えるマット・ミニスター(左) 写真:Getty Images

 ミニスターはカントレーより18歳も年上で、カントレーはしばしばミニスターのことを「ダッド(お父さん)」と呼ぶそうですが、まるで親子のような2人の信頼関係は強く深い様子です。

 その昔、ミニスターはプロゴルファーとして草の根のミニツアーに挑んでいましたが、ほどなくしてプロキャディを志し、フロリダ州の名門マッカーサー・クラブ所属のハウスキャディになって、キャディとしてのいろはを学んだ後、ゴルフ界のレジェンド、ニック・プライスなど数人の選手のバッグを担いだ経験があります。

 カントレーとミニスターは息も相性もぴったり合い、2018年の初優勝以来、すべての優勝は「2人で挙げた勝利」でした。しかし、2020-21シーズン終盤、ほんの一瞬だけ、2人の関係に「危機感を感じたんだ」と、ミニスターが明かしました。

深い絆をさらに深めたキャディのひと言

 シーズン終盤に、相棒キャディのマット・ミニスターがコロナ陽性となり、シーズンエンドのプレーオフ・シリーズまでにはなんとか回復したのですが、カントレーはミニスターに「大事を取って、第1戦は休んでくれ」と告げました。

 しかし、その第1戦でカントレーがミニスターの代理としてキャディを依頼したのは、あのタイガー・ウッズの相棒キャディ、ジョー・ラカバだったため、ミニスターは少々不安になったそうです。

 「キャディが休みをもらい、別の優秀なキャディが代理を務めたら、何かが起こらないとも限らないからな、、、、」

 相棒キャディの座が奪われてしまうのではないかと不安を覚えたミニスターは、ボスのためにできる限りのことをしようと考え、第2戦の試合会場に早々と前乗りして、コースをくまなく下見しました。そして、第1戦の会場から移動してきたカントレーに、こう告げたそうです。

 「このコースは、キミがこれまでに2勝を挙げたメモリアル・トーナメントのコースとよく似ている。だから、このコースは、キミに向いている」

 ミニスターのその言葉が、カントレーの自信を高め、それが第2戦での勝利につながり、その勝利がカントレーの自信をさらに倍増させ、最終戦のツアー選手権の勝利につながりました。

 すべての始まりは、ミニスターがボスに告げた一言。いやいや、カントレーが相棒キャディを大切にしてきたからこそ、相棒キャディがカントレーのために力を尽くし、それが2人の勝利につながりました。

 そんなふうに、キャディの一言は、ときとして万能薬のような働きをするものなのです。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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