「市原をゴルフの聖地に」ゴルフの町・市原市の本気度に迫る【小川朗のゴルフ深掘り!】

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ゴルフの聖地を目指すことを宣言した千葉・市原市 写真提供:市原市役所

2022年の暮れに千葉県の市原市で行われた記者会見で、小出譲治市長が「市原をゴルフの聖地にしたい」と発言しました。ゴルフへの注目度が高まっている中、日本一のゴルフ場数を誇り、“ゴルフの町”として地方創生の取り組みに力を入れている市原市の本気度に迫りました。

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ゴルフの聖地になるためのプロジェクトを開始

2022年末に市原市役所で開かれた記者会見 写真:筆者提供

 「市原をゴルフの聖地にしたい」。小出譲治市長が、昨年暮れに市原市役所で行われた会見で何度も口にした言葉です。

 ゴルフの聖地。真っ先に連想するのは、スコットランドのセントアンドリュースでしょう。実は、セントアンドリュースは世界最古のゴルフ場ではありません。しかし、18ホールのコースレイアウトをいち早く採用したほか、ウイリアム4世から「ロイヤル&エンシエント」(R&A)の称号を与えられ、英国のゴルフ統括組織となりボールサイズや重量の制限を実施するなど、長い年月をかけて世界のゴルフ文化をリードする役割を演じてきたことで、ゴルフの総本山としての地位を確固たるものにしました。

 2004年からR&Aはクラブから独立して、イギリス内外でのゴルフの普及や、USGA(全米ゴルフ協会)と世界のゴルフルールを統括し、英国のアマチュアを統括する団体となっています。こうした現在の繁栄の裏には、行政区とR&Aが協調してコースの運営に取り組むなど、共に歩んできた歴史があることも見逃せません。

ゴルフの町・市原市の本気度

 日本でゴルフの聖地を目指す市原市にも、その覚悟が必要でしょう。同市には33コースがあり、これは兵庫県三木市の25コースを抑えて日本一。ゴルフ場の入場者数も、年間160万人にのぼります。

 また、市原市ゴルフ場連絡協議会との連携により、市内のゴルフ場が参画するスタンプラリー方式の「市原ゴルフ場巡り33」や、毎年約700人の小学生が参加する小学生ゴルフ体験「手ぶらDEゴルフ」などを企画し、ゴルフ人口のすそ野を広げる取り組みに力を入れてきていますが、将来「ゴルフの聖地」と呼ばれるような存在になるためには、不断の努力が必要でしょう。

 その第1弾と言えるのが、昨年11月に設立された「一般社団法人 市原市ジュニアゴルフ協会」が主管する「第1回市原ジュニアゴルフオープン」の開催です。3月27日に33コースのなかで最も古い「姉ヶ崎カントリー倶楽部・東コース」で開催。募集人数は小学1・2年男女、3・4年男女、5・6年男女、中学生男女の各カテゴリー16人、合計128人で、市原市民でなくてもエントリーは可能です。

 画像提供:市原市役所

 中学生を除く小学生は、原則として親権者(準ずる方)と2名1組で参加でき、1・2年生は1ラウンド130ストローク未満、3・4年は120ストローク未満、5・6年は110ストローク未満、中学生は100ストローク未満でラウンドできることが参加資格に加えられています。

 注目すべきは、大会の開催スタイル。家族などのギャラリーのコース内観戦が可能で、ラウンド終了後には、市原市出身のプロゴルファーで、プロコーチとしても活躍中の石井忍氏による特別レッスン会も開催されます。

 そして何よりも魅力なのは、各カテゴリーで優勝した選手に、市原市ジュニアゴルフ協会の強化選手と同等のサポートが期間限定で受けられる特典。ラウンドごとに5000円の補助が出る特典が20回分受けられることになっており、これもジュニアの成長には大きなプラスとなるはずです。

 前出の小出市長は、「この大会を通して、真剣にゴルフに取り組む子どもたちに、本市ならではの魅力的なゴルフ環境を提供するとともに、世界で活躍するゴルファーを次々に輩出できるようにしたいと考えております」と、力強く決意を語っていました。

地元企業とともに天才少年をサポート

ポーズを取る根本悠誠くん 写真:筆者提供

 市原市が力を入れている理由の1つに挙げられるのが、同じ千葉県内の流山市から市原市に移住した天才少年・根本悠誠(ゆうま)くん(13歳=中学1年)の存在です。

 5歳でゴルフを始め、翌年の世界選手権、ワールドチャンピオンシップ(ともにU6歳の部)で優勝し世界一に。その後もジュニアの世界大会には日本代表として7年連続で出場を果たすなどして、通算270勝以上を挙げ、世界大会でも5勝を挙げています。ベストスコアは60で、ホールインワン回数はすでに33回もマークしているというから驚きです。

 現在は、大西魁斗プロらを輩出しているIMGアカデミーに単身留学中。年末の会見では、「素晴らしい環境を求めて市原市に来ました。ゴルフの魅力はラウンドして、スコアとか数えるのも楽しいところです。僕の目標はプロになり、4大メジャー大会で勝ち、グランドスラムを達成することです。その目標のためにアメリカのIMGアカデミーの留学することを決めました」と、力強く抱負を語ってくれました。

 サポートに地元企業が名乗りを上げていることも、根本くんを始めとするジュニアたちに心強いことです。グループ会社2社が市原市内にあるTREホールディングス(東京・千代田区)がサポート企業に決まりました。

 「我々のグループの主力の事業所がこの市原市にあるということで、非常にご縁がある市でございます。市原市さんは千葉県で初めて5月にSDGs未来都市を取得されまして、その考え方の中に小さなお子さんとか若い人たちが夢を実現していく、そういう社会を作るんだというコンセプトがございまして、私どもも非常に共感しております。なるべく早くこの市原市をジュニアゴルファーの聖地にしたいとことで、微力ではございますが、応援させていただきたく思っています」と、TREホールディングスの松岡直人会長も強力なサポートを約束しています。

 根本君も、「留学にあたりまして、スポンサー企業として協力いただきますTREホールディングス様には感謝申し上げます。多くの人に支えられてゴルフに取り組むことができています。恩返しできるようにと思いますので、今後とも応援よろしくお願いします」と、サポートに感謝の意を表明していました。

中央が市原市・小出譲治市長 写真:筆者提供

 小出市長は今後、国内第2位のゴルフ場がある兵庫県三木市と連携していくことも視野に入れ、「関西と関東、そういう分け方の中での取り組みっていうのも考えていこうかな」と語っています。

 ジュニアゴルフオープンは、1月15日からスポーツエントリーを通じての募集が開始され、すでに「関西からも、沖縄からも応募が来ています」(関係者の話)と出足は好調。全国からジュニアが集まってくる「ゴルフの聖地」への取り組み、滑り出しはまずまずのようです。

文/小川 朗(日本ゴルフジャーナリスト協会会長)

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