1998年にアメリカの女子ゴルフ界にデビューし、いきなりメジャー大会を続けざまに2つも制覇した朴セリ。彼女の母国である韓国に女子ゴルフブームを起こす火付け役となり、彼女に憧れる女子ゴルファーたちが次々にアメリカへやってくるようになりましたが、皮肉にも彼女はイップスで第一線から脱落します。今回は、そんな彼女の復活にまつわるお話です。
母国のファンの優しさに支えられた朴
朴セリ自身は、2004年にティショットを打とうとすると体が硬直して打てなくなるティグラウンド・イップスという奇妙な病気にさいなまれることになります。
「ティグラウンドに立つのが怖くなった」と語った朴は、失意のどん底に突き落とされて母国へ帰っていきました。
アメリカのゴルフ界では、朴の引退説も囁かれていました。しかし、母国のファンはとても優しかったと彼女は振り返ってくれました。
「道で出会った人々が、『私たちはいつまでもあなたの味方よ』と声をかけてくれた。そうやって励まされたおかげで、なんとか気を取り直してアメリカへ戻り、試合会場へ行ってみたら、今度はアメリカのギャラリーから、『また優勝できると信じているからね』と激励された。以前は、聞き流していたギャラリーの言葉が心に沁みました。自分がどん底まで落ちて、初めて人々の言葉を心で感じ、涙が止まらなくなりました」
強さを取り戻してもあの頃の自分には戻りたくはない
徐々に戦う意欲と自信を取り戻していった朴は、2006年6月の全米女子プロ選手権で2年1ヶ月ぶりの復活優勝を挙げ、続く全米女子オープンでも3位タイに食い込みました。
「完全復活」の見出しが躍る中、朴は静かに微笑んでいました。
「昔のようにスポットライトを浴びる日々が戻ってきても、もう昔の自分には戻りたくない。もう、孤独は嫌だから」
そう、ファンの応援は末長く温かいものです。「がんばり続けるあなたは決して1人じゃない」。私は記事の最後を、そんなフレーズで締めくくりました。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)