アメリカゴルフ界のスター選手たちがチャリティー活動に積極的に取り組んでいることは、ニュースでもよく取り上げられています。今回は、特にチャリティー活動に熱心だという、フィル・ミケルソンのユニークなチャリティー活動についてのお話です。
ゴルフ界のスター選手たちはチャリティー活動に積極的
アメリカのゴルフ界のスター選手たちは、みなチャリティー活動に積極的です。ファンや社会、スポンサーのおかげで自分たちのプロスポーツが成り立っているのだから、社会に恩返しをするのは当たり前のこと。彼らはそう思って社会貢献に精を出し、人々も、感謝の気持ちを忘れずにチャリティー活動にいそしむ姿を見て、初めてその選手のことを「一流」と認めるのです。
本気で悔しがったミケルソン
そんな中、とりわけチャリティー活動に熱心なフィル・ミケルソンは、しばしばユニークなチャリティーイベントに登場します。
あれは、2012年の秋でした。アメリカンフットボール(NFL)の試合会場で、ハーフタイムにミケルソンが登場し、夢の1打を打つというチャリティーイベントが行なわれました。片側のエンドゾーンから逆側のエンドゾーンに設置されたターゲットを狙って56度のウエッジで100ヤードショットを打ち、ターゲットの1.5メートル圏内に付けたら、ミケルソンの契約先のKPMGから100万ドル、約1億円が支払われ、経済的に困窮している子どもたちの本の購入費用として寄付されるという仕掛けでした。
大観衆が固唾を飲んで見守る中、いざ、ミケルソンが打ったウエッジショットは、ちょっとばかり手元が狂い、ターゲットを大オーバー。アメフトファンたちは、「あーあ」「ちぇ」などと大袈裟にがっかりして見せましたが、ショットは失敗に終わったとはいえ、残念賞として5万ドル、約500万円が支払われ、2万冊以上の本が子どもたちに贈られるというアナウンスが流れると、人々は温かい笑顔と拍手をミケルソンに送りました。
しかし、ターゲットを外してしまったミケルソンの笑顔は引きつっていました。控室に戻ったあとも、ずっとしかめっ面。そうやって本気で悔しがっていた姿が妙に印象的で、あのときのことは今でも忘れられません。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)