プロゴルファーの中にはゴルフ以外の特技を持っている人も少なくありません。野球やテニスなど他のスポーツだったり、音楽など、その道に進んでいてもきっと一流になれただろうと思える人もいます。今回はルーク・ドナルドという選手が自身の特技を生かして行った素晴らしい活動に関するお話です。
特技を生かして若いゴルファーを育てるシステムを構築しようとした
アメリカツアーの選手の中で、大学時代にアートを専攻していたのは、私が知る限りでは、昔も今も、ルーク・ドナルドただ1人だと思います。
イギリスで生まれ育ったドナルドは、アメリカ中西部の大都市、シカゴの大学へゴルフ留学し、そこで彼が専攻したのは大好きなアートでした。
大学を卒業し、2001年にプロ転向したドナルドは、アメリカツアーで戦い始めてからも、時間を作っては絵を描き続け、その絵をオークションにかけては、得られた収益をシカゴのさまざまな団体へ寄付していました。
よくよく聞いてみると、ドナルドは大学時代から積極的にチャリティ活動をしていたそうです。
ちょうどそのころ、ゴルフを通じて人間育成を図るファーストティ・プログラムという活動がアメリカから世界へ広まりつつあり、ドナルドはそのファーストティのシカゴ支部を自ら創設し、子どもたちにゴルフクラブを握らせては楽しい時間を一緒に過ごしていたそうです。
ルーク・ドナルドはいつまでもシカゴのヒーロー
さらにドナルドは、友人と協力してワインのドナルド・コレクションを作りました。そして、ファーストティ・プログラム・シカゴ支部のイベントを開催し、地元の有力者たちを招いては自分のワインのテイスティングと直売会を行なって、その収益もすべて寄付していました。
そうやって社会貢献に力を注いできたドナルドですが、肝心のゴルフは、2012年に5勝目を挙げて以来、不調に陥ってしまいました。
しかし、シカゴの人々はドナルドの成績がどんなに下降しようとも、「彼はシカゴのヒーローだ」と言って、彼をリスペクトし続けていました。
ドナルドは今も時間を作っては絵を描き、その絵は今でもオークションに出せば高額で競り落とされるそうです。
そして彼は今でも、そうした収益をすべて寄付しています。そんなドナルドは、シカゴだけではなく、みんなのヒーローだと私は思います。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)