選手をサポートするマネージャーは決して表舞台に立つことのない裏方です。でもマネージャーがいるからこそ、選手達はプレーに集中することができるんです。今回は、私も助けられたことがある敏腕マネージャーのお話です。
担当する選手が揃って表彰台に!
2008年の秋。アメリカのPGAツアーの最終戦、ツアー選手権の表彰式で、2人のチャンピオンが笑顔で立っていました。1人はその大会を制したコロンビア出身のカミロ・ビジェガスという選手。そして、もう1人は、そのシーズンのポイントレースを制して総合優勝に輝いたフィジー出身のビジェイ・シンという選手でした。
なんとなく、表彰式に2人の優勝者というのは違和感があるということで、今ではそうならないようにツアーのシステムが改良されているのですが、当時は大会の優勝者とポイントレースの総合優勝者が異なる選手になるケースがあり、実際、あの年はビジェガスとシンの2人が並んで表彰されていたのです。
それはそれとして、当時の表彰式のとき、大勢のカメラマンたちの放列の合間に1人だけカメラマンではないスーツ姿のアメリカ人の姿がありました。
彼はビジェガスとシンの両方を担当しているマネージャーで、2人の優勝者をスマホで撮影しようと四苦八苦していました。
選手のことを一番に考えていた敏腕マネージャー
「まさか僕の担当選手が2人揃って表彰式に立つ日が来るなんて、想像したこともなかった。僕は本当にラッキーです」
そのマネージャーは謙虚にそう言ったのですが、実を言えば、彼は優秀な実績を誇るベテラン・マネージャーです。その昔、悪態ばかりついていたセルジオ・ガルシアの教育係を任されたときは、「ガルシアをよろしく頼みます」と方々に頭を下げて回っていました。
私自身、彼が担当する選手を取材する際に、彼に助けられたことが何度もありました。
いつも陰の存在に徹しているその敏腕マネージャーは、自分がスポットライトを浴びようとは決してしません。でも、担当選手が2人も揃ってチャンピオンに輝いたことは単なる偶然ではなく、彼の陰の努力の賜物だと私は思いました。
あのとき、彼にカメラを向ける人は1人もいませんでした。でも私は、こっそり彼にカメラを向け、シャッターを切りました。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)