プロゴルファーには獲得賞金のほかに、いわゆるスポンサー契約というものが存在します。そのためには自身をどうプロデュースするかもプロとしての大事な仕事の一つです。今回はそんなプロ意識に溢れたお話です。
食べるシーンはNGだったミケルソンの心理
アメリカゴルフ界のスター選手、フィル・ミケルソンは、いつも自分が信じることを徹底的に貫き通してきましたが、その姿勢はファンサービスや家族最優先だけではなく、自身のイメージの維持確保にも見て取ることができました。
全米各地には「イン・アンド・アウト」というハンバーガー・ショップがあります。アメリカでは人気のハンバーガー・ショップです。
ある時期、ミケルソンはそのハンバーガーが大好きになり、「昨日もディナーはイン・アンド・アウトに行った」「ほかの選手たちも来ていて、みんなで一緒に食べた」などと、しばしば話していました。
その話をアメリカゴルフ界での「話題」、「流行」として日本に紹介しようと思った私は、ミケルソンに「あのハンバーガーを食べるところを撮影させてくれませんか」と頼んでみました。
しかしミケルソンからは「ダメダメ。食べる姿を撮影した写真を雑誌に掲載されると、僕のイメージが損なわれる」と言われ、残念ながら撮影は実現できませんでした。
食べている姿にも気を使わなければならないプロって本当に大変
なぜ、食べるシーンの写真が掲載されるとイメージダウンになるとミケルソンが思ったのか、その理由は、尋ねてみても、よくわかりませんでした。でも、一度「ノー」と言ったら、彼はなかなか撤回しないことはわかっていたので、私はあっさり依頼を引き下げました。
しかし、ミケルソンがスター選手としての自分のイメージを一生懸命、守ろうとしていたことだけは、よくわかりました。
その後、アメリカツアーでは、あのハンバーが大人気になり、「イン・アンド・アウト」がスポンサーになって、試合会場にキャディのための休憩用テントを特設するなど、ハンバーガー・ショップとアメリカツアーには密接な関係が築かれています。
そのきっかけがミケルソンだったんだなと思うと、彼の存在感が一層大きく感じられます。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)