マスターズ観戦では靴を脱いではいけない!?知られざるマスターズルール【舩越園子 ゴルフの泉】

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過去の入場券を帽子につけて観戦するパトロン 写真:Getty Images

ゴルフの祭典・『マスターズ』では私たちメディアにもいくつかのルールが課せられ、コース上で携帯電話が使えないこともその1つです。そんなマスターズ独自の約束事はパトロン、いわゆるギャラリーの方々にも課せられています。今回は、そんなマスターズ観戦時の決まりについてのお話です。

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パトロンに課せられる不思議なルール

 マスターズの観戦チケットを大量購入することで運営資金を援助し、大会消滅の危機から救った「パトロン」は、『マスターズを主催するオーガスタ・ナショナルにとって、かけがえのない恩人です。だからこそ常に理想的な存在であってほしいと願ったオーガスタ・ナショナルは、パトロンに、いくつかのルールや決まりを定めました。

 たとえば、「コース上では靴を脱いではならない」という決まりがあります。なぜ?どうして?と、思わず首を傾げてしまいそうです。

 靴を脱いではならないのは、安全上の意味合いもあるのだと思いますが、家の中でも靴を履いたまま生活する欧米人の間では、素足は汚いものだから靴で覆っておくことが礼儀だという考え方が昔からあります。

 おそらくは、その考え方に基づいて、「パトロンたるものは神聖なるオーガスタ・ナショナルのコース上では素足を晒してはいけませんよ」ということで、この決まりができたのではないだろうかと私は想像しています。そして、ちゃんと靴を履いているその足で、コース内では決して走ってはいけませんよという決まりもあります。

 さらにパトロンには、「寝転んではならない」という決まりもあります。芝生の上で、ついついゴロンと寝ころび、「あー、気持ちいい」なんてことを、オーガスタ・ナショナルのパトロンは、決してやってはいけない、ということになっています。

 ちなみに、メディアへの注意事項の中に「携帯電話禁止」は記載されているのですが、「靴を脱いではならない」「走ってはならない」「寝転んではならない」といった決まりは記載されておらず、だから私は、そんな決まりがあることをまったく知らず、小走りしてしまい、「オーガスタでは走ってはいけませんよ」と咎められ、ビックリしたことがありました。

 それは四半世紀以上も昔の出来事でしたが、走ってはいけないという決まりは、今でも生きているのです。

不思議なルールの理由は「オーガスタナショナルが決めたから」

18番グリーンに設置されているパトロン用の椅子 写真:Getty Images

 コース上で「靴を脱いではいけない」「走ってはいけない」「寝転んではいけない」という決まりは、どれも、ちょっぴり不思議な決まりです。

 パトロンだけでなく、メディアも対象となっている「携帯電話をコース上に持ち込んだり、使用したりしてはいけない」という決まりもその1つですが、なぜダメなのかと言われると、「オーガスタナショナルがそう決めたから」というのが、ベスト・アンサーなのだと私は思います。

 バンカーのことを、アメリカの一般ゴルファーは、しばしば「サンド・トラップ」と呼びますが、オーガスタ・ナショナルではバンカーは必ず「バンカー」と呼ばなければなりません。この決まりは、マスターズをTV中継するアナウンサーたちにも徹底されているそうです。

 「トラップ=わな」という意味ですし、世の中には色仕掛けでワナにはめる「ハニー・トラップ」なんて言葉もあるため、これをオーガスタ・ナショナルが嫌うことは、なるほどと頷けます。

 また、「前半」と「後半」のことを「フロント9」「バック9」と呼ぶことは、世の中ではきわめて一般的ですが、パトロンは「ファースト9」「セカンド9」と呼ぶべし。どうやら「バック」と呼んでしまうと、「後半」を軽視している感が生じるからだと、モノの本には記されています。

 パトロンは気高く美しくあれ――すべては、その願いから生まれた決まりだそうですが、いやはや、スゴイなあと、溜め息が出てしまいます。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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