多くのゴルファーの憧れであるゴルフの祭典・『マスターズ』ですが、私たちメディアにとってもマスターズは憧れであり、特別なトーナメントの1つです。今回は、そんなマスターズが徹底しているあるルールについてのお話です。
ギャラリーがパトロンと呼ばれる理由
「ゴルフの祭典」と呼ばれる『マスターズ』にも、かつては経営難に陥っていた苦しい時代がありました。
マスターズを主催するオーガスタ・ナショナルのメンバーたちは、大会を維持継続させたい一心で、地元の企業や人々を一軒一軒訪ね、「マスターズの観戦チケットをたくさん買って、大会を助けてください」と、チケットのまとめ買いによる資金面の援助をお願いして回りました。
そして、「よし、20枚買おう」「30枚買おう」という具合にチケットを購入した企業や団体、人々は、それからは「パトロン」と呼ばれるようになりました。
パトロンは、マスターズを消滅の危機から救った恩人であり、敬愛する人々です。だからこそ、永遠に素敵な存在であってほしいものです。私たちが自分の大切な人に、「素敵でありつづけてほしい。こうあってほしい」と願うのと同じように、オーガスタ・ナショナルもパトロンに対して、気高い理想像を求めるようになりました。
そして、それを具現化し、維持していくために、オーガスタ・ナショナルはパトロンに対するルールや決め事を後に定めたのです。そのルールや決め事の一部は、マスターズ観戦に訪れる一般のギャラリーやマスターズ取材に訪れる世界のメディアにも当てはめられています。
スマホはコースに持ち込めない
たとえば、コース上では携帯電話の使用が完全禁止とされており、コース上に持ち込んだり、取り出したりすることも禁止されています。
メディアが携帯電話の使用を禁止される大会は、言うまでもなくマスターズが唯一で、これは仕事上はかなり不便ですが、まあ、彼らの大会、彼らのコースだから、彼らの決まりは受け入れるしかありません。
それに、携帯電話はコース上は禁止でもメディアセンターでは使えるし、メディアセンターの設備や無料で提供される食べ物や飲み物の充実度はマスターズが最高レベル。だから、誰も文句は言いません。
しかし、そんなメディアの話はさておき、パトロンに対する決まりは、携帯電話禁止以外にもずいぶんたくさんあることを初めて知ったとき、私は本当にびっくりさせられました。そのお話は次回に。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)