6月は全米オープンの季節です。今年の舞台は超名門のロサンゼルス・カントリークラブ。限られた人しかプレーができない、ベールに包まれたコースでの開催という点でも注目が高まりそうです。今回はそんな全米オープンに関するお話です。
欧米では夏至の頃をみんなが待ち望んでいる
フランスのル・マンで行なわれる車の24時間耐久レースは、「夏至の前後の週末に開催されるのが慣例。夏至は暗闇を走る時間が最短になるから、レースには最適なんだ」と、ヨーロッパの車事情に詳しい人が教えてくれました。
欧米では、サマータイムに入ると、時計が夜の時刻を示しても太陽は沈まず、いつまでも明るい時間が続きます。それはゴルフ好きの人々にとっては、待ちに待った楽しい時間です。
仕事を終えた夕方からでも、軽く9ホール、ちょっと急げば18ホールだって回ることができます。ゴルフのあとは、仲間たちと美味しい食事をしながらゴルフ談義に花を咲かせる。そんな楽しい時間が、夏至のころなら、たっぷり取れるというわけです。
欧米では夏至の日のことをロンゲストデイと呼びます。楽しい時間が1年で最も長くなるその日は、ゴルファーにとって最高に素敵な日ということができます。
長い長い1日だからこそ感動も大きくなる
プロゴルフ界に目をやれば、夏至のころは全米オープンの季節です。
最終日に最終組がスタートするのは、多くの場合、午後2時すぎです。優勝を競い合う選手たちは、みな緊張で身を固くしながら昼下がりまでスタートを待ち、それから過酷な優勝争いに挑んでいくのです。
ようやく勝敗が決まるのは、午後7時から8時にかけての時間帯です。朝、目覚めてから、その瞬間を迎えるまでの長い長い時間は、「不安と緊張で胸がつぶれそうだった」「人生で最も長い1日だった」などと、過去の優勝者たちは語っていました。
夏至の季節に展開される全米オープンのサンデー・アフタヌーン。心臓がつぶれそうな緊張の連続は苦しい戦いだと思います。しかし、最後に噛み締めるものが優勝という名の素敵な味わいになれば、最長の日は最高の日と化してくれます。
だからやっぱりロンゲストデイは、ゴルファーにとって最も素敵な日です。今年もロンゲストデイのドラマを是非とも見たいと思っています。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)