大人になってから大学で勉強することは日本でも増えているようですが、競技スポーツ部に入り、現役選手として活躍するということは、なかなかできることではありません。今回は、アメリカの大学ゴルフ部で、年齢の壁を乗り越えるだけでなく、選手としても仲間たちに好影響を与えている現在64歳の女子大生ゴルファーのお話です。
挑戦に年齢は関係ない
2021年のことですが、アメリカ南部のジョージア州にラインハート大学という私立の大学があり、その女子ゴルフ部に、20歳前後の部員たちとともに「63歳現役部員、デビー・ブラウトさん」が活躍しているという話を耳にして、ちょっぴり驚きました。
いわゆる「大人」になってから大学へ進むことは、最近では日本でも珍しいことではなくなっています。でも、そんな「大人の大学生」がスポーツ部の現役部員になるケースは、アメリカでも珍しいと言えます。
彼女は昔からゴルフをやっており、その腕前はちょっとしたものだったそうですが、数年前に最愛の夫を亡くし、すっかり無気力になっていました。
しかし、あるとき知人の勧めでラインハート大学に進学してみようと思い立ちました。
コロナ禍に見舞われた2020年はオンラインで講義を受けましたが、2021年からはキャンパスで講義を受けるようになり、彼女の心は少しずつ活力を取り戻していきました。
そして「こうなったら思い切って、入っちゃえ」ということで、彼女は女子ゴルフ部への入部を心に決めました。
セカンドライフを謳歌
63歳の入部希望者がいると知らされた26歳のコーチは最初は戸惑ったそうです。
「でも、小さなことにも深く感謝するデビーの姿勢は、生きる上で何が大切かを若い部員たちに教えてくれます。デビーは、みんなのビッグ・シスターとして、部員たちのメンタル面を支えてくれています」と、すぐに彼女を歓待するようになりました。
チームのみんなから頼りにされ始めたブラウトさんは、「セカンド・ライフを謳歌しています」と嬉しそうです。
年齢に関わらず、みんな一緒に楽しめることは、ゴルフの最大の魅力です。パワーや技術のみならず、豊富な人生経験が重んじられるところも、ゴルフならではの奥深さであり、面白さでもあります。
現在64歳の女子大生が笑顔で活躍できるゴルフは、やっぱり素敵なスポーツだなと、あらためて感じさせられました。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)