生涯スポーツと言われるゴルフですが、プロにとってのゴルフは少し違います。試合で体を酷使するだけでなく、フィジカルの強化も同時に続けなければならないアスリートスポーツだからです。今回は、選手たちの怪我を不思議な力で治したある人物のお話です。
ミケルソンの表情がみるみる和らいだ魔法のような力の持ち主?
2006年の全米オープンで惜敗したフィル・ミケルソンは、「今年こそは優勝だ」と雪辱に燃えながら翌年の全米オープンに臨みました。
しかし、開幕前の練習で左手首を痛め、せっかく積み上げてきた練習の成果をまるで発揮できない状況に陥ってしまったのです。
それでもミケルソンは諦めきれず、ボロボロの身体で初日の1番ティに立ちました。ショットするたびに痛みで顔を歪める彼の姿は、とても痛々しかったです。
ふと気が付くと、ロープ外からミケルソンを見守っている筋肉隆々の人物がいました。彼はミケルソンが痛みを露わにするたびに、駆け寄ってミケルソンの手首を握ったり、さすったり。するとミケルソンの表情がみるみる和らぐから不思議でした。
そのマッチョマンの名前はジム・ウェザーズ。かつては陸軍特殊部隊、グリーンベレーの一員として横須賀ベースに駐屯していたそうですが、パラシュート事故で重傷を負い、そのころにトシ・ナミアミという84歳の盲目の女性に遭遇しました。彼女は人々のケガや病気を治す魔法のような能力を持つヒーラーだったそうです。
2度も生死の境から帰還した奇跡
そのナミアミはウエザーズに独特のオーラを感じ取り、自身の手や指からマジカルパワーを発して、傷病を治すヒーリング術をウエザーズに伝授しました。
その後、ウエザーズはさらに2度も不慮の事故で生死の境をさまよいましたが、2度とも奇跡的に回復。彼がゴルファーをはじめとするアスリートにヒーリング術を施すようになったのは、それからだそうです。
ウエザーズはミケルソンのみならず、フィジー出身のビジェイ・シンや帝王ジャック・ニクラスからも頼りにされており、誰かが「痛い」と言えば飛んで行って痛みを治す、文字通りのヒーラーとして活躍していました。
クラブやボールがどんどん進化していく時代に、そんな魔法の力が信じられていたことは、考えてみれば不思議でした。
しかし、それから数年後、ウエザーズの姿はアメリカツアーの会場では見られなくなりました。あのヒーラーは一体どこへ消えてしまったのか。そんな不思議なことがありました。ウソのような本当の話です。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)