いよいよ今年もゴルフの祭典・マスターズが近づいてきました。マスターズを制し、勝者に授けられるグリーンジャケットを羽織った松山英樹の嬉しそうな姿は今も目に焼き付いています。あの時のシーンは、日本中の多くの方々がテレビやインターネットで目にしたのではないでしょうか。今回は、そんなマスターズのグリーンジャケットに関するお話です。
グリーンジャケットはそもそも優勝の証ではない
ゴルフをしない方々の中には、マスターズの優勝者がグリーンジャケットを羽織る慣例や儀式を、松山の優勝で初めて知ったという方々もいたのかもしれませんね。
>>マスターズ優勝者がグリーンジャケットを自由に着られるのは1年だけ!
グリーンジャケットは、そもそもは優勝の証ではなく、マスターズの舞台であるオーガスタ・ナショナルのメンバーの証として、1937年に作られました。
クラブハウスに入る際、グリーンジャケットを着ている人はメンバーで、着ていない人はノンメンバー。そんなふうに一目瞭然であれば、従業員や係員にもわかりやすい。なにより、メンバーがゲストを伴ってクラバハウス内のレストランで食事をしたとき、ウエイターがチェックを渡す相手を間違えなくて済む。
それが最大の理由だったという逸話は、とても興味深くて、笑ってしまいました。
優勝者に授けられるようになったのは1949年から
そんなふうにメンバーの証として作られたグリーンジャケットが、マスターズの優勝者に授けられるようになったのは、それから12年後の1949年からで、勝利の証として最初にグリーンジャケットを羽織ったのは、後にゴルフ界のレジェンドと呼ばれたサム・スニードでした。
そして、優勝して授けられたグリーンジャケットは、勝利の証であると同時に、本来の意味である「メンバーの証」でもあり続けます。
つまり、マスターズで優勝して、グリーンジャケットに袖を通したチャンピオンは、その瞬間から、格式高いオーガスタ・ナショナルの名誉メンバーとなり、生涯にわたって、マスターズに出場することができるようになり、オーガスタ・ナショナルに自由に出入りすることも可能になるのです。
29歳でマスターズ優勝を果たした松山選手は、50歳になってシニア入りしてからも、60歳、70歳、80歳になっても、彼自身がマスターズに出たいと思えば、いつまででも出られる。
それは、グリーンジャケットを羽織った勝者だけに与えられる最高の特権なのです。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)