ニック・プライスの不調時の流石の練習法!【舩越園子 ゴルフの泉】

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アーニー・エルス(左)と談笑するニック・プライス 写真:Getty Images

PGAツアーではメジャー3勝を含む18勝を挙げるなど、名実ともにレジェンドと呼ぶべきニック・プライスの感心させられた練習法のお話をしたいと思います。

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あまりの調子の悪さにご機嫌斜めのプライスが始めた練習法とは!?

 2002年の秋だったと思います。メジャー3勝を挙げたビッグスター、ジンバブエ出身のニック・プライスが颯爽と練習ラウンドに出ていったと思ったら、30分もしないうちに引き上げてきて、そのまま練習場へ直行しました。ひどく機嫌が悪そうで、声をかけるのもためらわれ、私はしばらく黙って眺めていました。

 そそくさと打席に入ったプライスは、7番アイアンを取り出し、ボールを打ち始めました。しかし、彼はなぜだか右腕だけで打っていました。そのまま40分ほどが経過したころ、プライスは私の方を振り返り、にっこり笑ってこう言いました。

 「2ホールだけ回ったけど、あまりにも調子が悪いから引き上げてきたんだ」

 機嫌が直っている様子だったので、私はすかさず、「なぜ右腕だけで打っているのですか?」と尋ねました。すると彼は面白い話を始めたのです。

超一流選手にとっても初心に帰ることが一番の練習法

1992年の全米プロで優勝した時のニック・プライス 写真:Getty Images

 「たとえば、あの木の上を抜いて攻めようと思ったとき、あの木、あの木と思うだけでは漠然としていて集中できない。でも、あの木の、あの枝の、あの葉っぱという具合に意識の先を狭めると集中できるんだ。それと同じ。技術面も精神面も同じなんだ。思い通りのショットが打てないとき、いいショットを打とうと思っても、何がいいショットなのかが漠然としていて、なかなか改善されない。でも、ボールを捉えることが精一杯というぎりぎりの状態で練習すれば、忘れていた基本が自然に思い出され、意外と早く立ち直ることができるんだ」

 なるほど。不調のときは、より良い状態を求めて悪あがきするのではなく、遠回りに思えても出発点まで戻り、初心に帰れば道は開けるということ。

 ゴルフの練習方法について尋ねたのに、人生を教えられた気持ちになり、これからは行き詰ったら視点を変えて、発想を転換してみようと思いました。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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