多くを語らない敏腕キャディのプライドの話【舩越園子 ゴルフの泉】

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1998年全米オープンでのマイク・コーワン(左)とタイガー・ウッズ 写真:Getty Images

タイガー・ウッズがプロデビューしたとき初代キャディに抜擢されたのは、サンタクロースのような白いひげをたくわえ、「フラフ」というニックネームで知られるベテランキャディ、マイク・コーワンでした。今回は、そんなフラフに関するお話です。

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ウッズから解雇された理由には違和感が…

 ウッズと数々の勝利を重ねたコーワンでしたが、3年ほどでウッズから離れ、ジム・フューリックという選手のキャディになりました。

 フラフが鞍替えしたわけではなく、フラフがウッズから解雇されてしまったのです。その理由は、フラフがボスであるウッズのことを、メディアにあれこれしゃべり過ぎてウッズの怒りを買ったからだと言われていますが、真相は不明です。

 フラフは無口なほうなので、しゃべり過ぎが原因という説には違和感を感じますが、ともあれ、2人が別れた背景には、なにか微妙な問題があったのでしょう。

 2005年のあるとき、フラフの「昔のボス」だったウッズと、「現在のボス」であるフューリックが、ウエスタンオープンという大会で優勝争いを演じました。

 そして、誰もがウッズの大逆転優勝を期待していた中、勝利したのは、フラフが黙々とサポートをし続けたフューリックだったのです。

多くを語らないプロキャディとしてのプライド

2005年ウエスタンオープンでのマイク・コーワン(左)とジム・フューリック 写真:Getty Images

 アメリカのメディアはほぼ全員、勝ったフューリックではなく、負けたウッズのもとへ走り寄って取材を始めました。

 フラフは勝利キャディにも関わらず、メディアでごった返していたインタビューエリアのすぐ横の階段にポツンと一人で座っていました。

 「おめでとう、フラフ」と私が右手を差し出すと、フラフは「サンキュー」と言いながら私の右手を握り返し、「今日まで、長かったよ」という一言だけを口にしました。

 そのとき、背後からウッズの声が聞こえてきました。

 「次の全英オープンでは必ず勝つ」

 そんな「昔のボス」の強気の発言をフラフは黙って聞いていました。でも、フラフの目は、「いやいや、勝つのはオレのボスだぜ」と言っていました。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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