石川遼と今田竜二が見せてくれた取材者への信頼の形とは【舩越園子 ゴルフの泉】

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2011年全米オープンでの石川遼 写真:Getty Images

通常、トーナメントに出場しているプロゴルファーたちは、試合後に記者たちの取材にこたえています。そこで聞いた話をもとに記事が作られるわけですが、選手たちも人間ですから、いいプレーができなかった時には取材に対応したがらない選手もなかにはいます。今回は、プロとしての義務と言われる試合後の取材についてのお話です。

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試合後の取材は「プロとしての義務」なのか

 選手が試合後に取材に答えることは「プロとしての義務」だと言われています。

 でも私は、選手はアスリートである前に生身の人間なのだから、どうしても答えられないときは答えなくてもいいと思っています。しかし、ジャーナリストとして、どうしても追求したいことがあるときは、たとえ選手が無言で立ち去ろうとしても、私は追求しようとします。

石川遼と今田竜二が見せてくれた信頼の形

アメリカツアーで戦っていた今田竜二(左)と石川遼(右)(写真は2011年ノーザン・トラスト・オープン) 写真:Getty Images

 2011年ごろ、アメリカツアーで戦っていた日本人は、石川遼と今田竜二の2人でした。

 石川選手は全米オープン2日目のラウンド後、悔しさが溢れ返り、大勢の日本人記者たちの間をすり抜けて走り去っていきました。私は全速力で走って追いかけ、ついに彼をキャッチしました。「あとでもいいから話を聞かせてくれるよね?」と声をかけると、石川選手は小さな声で「ハイ」と答え、クラブハウスへ入っていきました。

 10分後、彼は外へ出てきて取材に答えました。それは不甲斐ないプレーに泣いた石川選手がなんとか見せた意地とプライド、そして誠実さでした。

 今田選手はセントジュード選手権の2日目のラウンド中、自分のプレーに激怒し、スコアカードを提出するやいなや無言で去っていきました。

 そんな彼を私は追いかけませんでした。話したくないのだろうし、無言で去った心情は理解できたので、それ以上に聞きたいことはありませんでした。

 しかし、1時間ほど経ったころ、今田選手は私の携帯にメッセージを送ってきたのです。「取材を無視してすみませんでした。心身ともに限界でした」と書かれていました。

 取材は人と人とが接して行なうことなので、心が通い合っていなければいい仕事はできません。取材に必死に答えてくれた石川選手、取材を無視したことをわざわざ詫びてくれた今田選手。彼らの心がとてもうれしく感じられ、彼らの心に応える原稿を書きたいと心から思った出来事でした。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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