日本一の繁華街・銀座のど真ん中にたたずむ「太平洋クラブ銀座」。ゴルフを愛する大人たちのテーマパークともいえるこの完全会員制社交クラブを、ゴルフジャーナリストの舩越園子さんが初めて訪問。その目に映った景色とは。
日本の中心・銀座にたたずむ大人たちの完全会員制社交クラブ
「銀座の素敵なクラブに行ってみませんか?」
そんなお誘いを受け、私が「イエス」と即答したワケは、そのあとに「ゴルフ好きなら、きっと満足できるクラブです」という一文が添えられていたからだ。
百聞は一見に如かずである。さっそく訪ねてみると、そのクラブは銀座の中心部である6丁目、並木通りとみゆき通りが交差する角地に建つビルの4階にあった。
エレベーターを降りると、エントランスには「Taiheiyo Club GINZA」のサイン。その上には「GINZA GOLFING SOCIETY」の文字とロゴマークが記されている。
「太平洋クラブ銀座」は太平洋クラブに所属する1万9000人のメンバーとこの太平洋クラブ銀座独自のメンバーとそのゲストが集う社交場だ。「都心にサロンがあったらいいな」というメンバーたちの声を受け、2020年9月にオープンした。
そして、「GINZA GOLFING SOCIETY」は、ゴルフをこよなく愛し、ゴルフとゴルフ文化の日本における発展を願う大人たちの完全会員制の社交クラブだそうだ。つまり、「GINZA GOLFING SOCIETY」の社交の場として「Taiheiyo Club GINZA」が存在している、ということになる。
エントランスで来場者を待ち受ける太平洋クラブ御殿場コース18番のオブジェ。
太平洋クラブグループ会員は自動的にGINZA GOLFING SOCIETYの会員になり、ゲストは会員の同伴により利用できるほか、会員の紹介によってGINZA GOLFING SOCIETYの会員に入会することが可能。
エントランス・サインの横には太平洋クラブ御殿場コースのシグネチャーホールである18番を模したオブジェが掲げられている。数々の名場面が生み出された左サイドのフェアウエイ・バンカーのアゴの高さが実際の目線通りに再現されており、まだクラブの中に足を踏み入れてもいないのに、いきなりこのオブジェの前でゴルフ談義に花が咲き、ワクワクさせられた。
「素敵」が盛りだくさんのクラブ
レセプション・エリアに併設された小さなショップに目をやると、メンバー専用の2種類のジャケットが目に入る。
富士山のブルーを採り入れた「御殿場ブルー」のツイードのジャケットは秋冬用で、スコットランドのタータンチェック協会認定のチェック柄のジャケットは春夏用だそうだが、そのチェック柄に「マリガン・チェック」と名付けたのは、民事再生から「もう一度、やり直す」という誓いの意味が込められていると知って、「なるほど」と深く頷かされた。
みゆき通りにちなみ、「MIYUKI」と名付けられたラウンジ&ライブラリーには、日本と世界のゴルフ関連書籍がずらりと並んでいたが、興味を引かれたのは、その横に展示されていたヒッコリークラブ。展示のみならず販売もされており、ヒッコリークラブによる大会も開催されていると聞いて、思わず「へー」と唸らされた。
ラウンジ奥の一角には並木通りとみゆき通りが交わる景色を眼下に見下ろせる特別なスペースがあり、6丁目6番地1号そのままに、この特別席は「661」と名付けられている。
一方、「NAMIKI」と命名されたダイニングは最大28席、「GOTEMBAR」なるバーを含めると最大40席までの利用が可能だが、このダイニングにもユニークな仕掛けがある。
テーブル席をクラブハウスに見立て、床には18番グリーン、その奥に並ぶモスグリーンのバー・スツールの列は林、バーカウンターの奥に積み上げられたボトルの山は富士山だと思えば、その絵柄は、ちょうど御殿場コースのクラブハウスから富士山を望む景色と重なると言われると、誰もがくすっと笑ってしまうことだろう。
ボトルの富士山がそびえるバーカウンターの裏側には、本物の富士山の裏側にも見られる風穴を模したオブジェに囲まれた「富岳風穴」なる隠れ家のような小部屋があり、150種を超える世界のワインやウイスキーを楽しみながら、独自の時間と空間を満喫できる。
太平洋クラブが創業された1971年にちなみ、当時の新橋のスナックを再現した「スナック昭和」の小部屋に足を踏み入れた瞬間、昭和世代のゴルファーはノスタルジックな世界にタイムスリップさせられ、懐かしい思い出も次々に蘇る。
「銀座の素敵なクラブ」は、その通り、「素敵」が盛りだくさんで、いろんな楽しみ方がぎっしり詰まったクラブだった。
“素材重視”への原点回帰 松平総料理長が最優先する「お客様中心の料理」
ダイニングでランチをいただくことになった。「世界のミートスペシャリスト、沼本憲明氏によって厳選された黒毛和牛の様々な部位を特製のたれで漬け込んで網焼きし、その上にトリュフがふりかけられた贅沢な一品」とある。
「濃厚な生卵を溶いて、上からかけて、お召し上がりください」
そんな説明が後方から聞こえてきて、振り向くと、自ら沼本丼を運んできてくれた総料理長・松平直人氏の優しい笑顔があって、妙にほっとさせられた。
料理人が醸し出す雰囲気は、きっと料理に反映されているはずで、こんな笑顔を見せる松平氏が作る料理には、優しさや気遣いが込められているのではないかと思えたからだ。
太平洋クラブ軽井沢リゾートで27年間、料理を作り続けた後に、太平洋クラブの総料理長になり、太平洋クラブ銀座でその腕を振るっている松平氏だが、長いキャリアの途上には新たな発見も多々あったそうだ。
「軽井沢時代、あるお客様が洋食のレストランであることを承知の上で『金目鯛の煮つけが食べたい』とおっしゃって、作って差し上げたら、とても喜ばれ、後日、お手紙までいただいたことがありました。料理人として、もちろん自信作を提供していますが、お客様全員がそのテイストを好まれるわけではないことに、あらためて気づかされました」
それまでも松平氏は最大限、自分で料理を運び、お客様と会話を交わしていたが、金目鯛の一件以降は、より一層、双方向のコミュニケーションを心掛け、「お客様中心の料理」を最優先するようになった。すると、料理そのものにも自ずと変化が現れたという。
「以前は、お皿にソースで絵を描くような料理が中心でした。でも、そのソースがお皿の上のすべての素材に必ずしも合うとは限らない。だから、ソースを使うことをやめ、素材重視の料理に変えました。素材の良さを際立たせれば、料理はもっと美味しくなる」
それは、きっと料理人としての原点回帰のような気づきだったのだろう。お客様中心で素材重視の料理を心掛けたら、今度は太平洋クラブのキャディの声も聞こえてきて、従業員食堂の充実を図りたくなったそうだ。
「キャディがゴルフ場で唯一ほっとできる場所は従業員食堂だという声を聞いたとき、バックヤードを整える大切さに気付きました」
そういう優しさが松平氏の料理人としての本髄なのだろう。最初に目にした彼の笑顔から、その優しさが醸し出されていたからこそ、ほっとさせられたのだと納得できた。
ゴルフを愛する大人たちのテーマパーク
支配人の上入佐辰也氏は、じっくり静かにもてなすタイプだ。愛想笑いを浮かべながら社交辞令を口にする代わりに、太平洋クラブ銀座の隅から隅までを頭に入れた上で、来場したメンバーやゲストの案内役と引き立て役に徹している。
支配人として銀座にやってきたのは、コロナ禍の真っ只中の1年前。
「それまでは、銀座と言えばお酒と夜のイメージでした。でも、ここへ来てから、昼間の明るい銀座、家族で楽しむ銀座も知りました」
銀座には、いろいろな顔があることを知ったように、「このクラブへ来てくださるメンバー様にも、いろいろな方々がいらっしゃる。そんなメンバー様どうしが知り合い、みんなが楽しめる場所にしたい。スコットランドに由来するゴルフ文化を日本で再現するゴルフ好きのためのテーマパークにしたい。高級感を大事にしながら、みんなが明るく元気に楽しめる場所にしたいと思っています」
上入佐支配人の言葉通り、太平洋クラブ銀座は、多様なメンバーやゲストのニーズに応え、みんなをエンタテインするために、たくさんの工夫と仕掛けをぎっしり詰め込み、たくさんの「素敵」を散りばめながら「ウエルカム!」と両腕を広げている。
まさに、ゴルフを愛する大人のためのテーマパークだ。そこでゆるやかに流れる時間と美味しい食と酒を満喫すると、きっと誰の心にも素敵な印象が残る。
「楽しかった」
「美味しかった」
「癒された」
最後に抱く一言は人それぞれだと思うのだが、心の底から湧き出す一言こそは、太平洋クラブ銀座、銀座ゴルフィング・ソサエティのファンになった証だ。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
写真提供:太平洋クラブ銀座
Taiheiyo Club GINZA
東京都中央区銀座6丁目6番1号 銀座凮月堂ビル4F
公式ホームページ
【営業時間】
月〜土:12時〜22時30分/祝日:12時〜21時
※休業日:毎週日曜日(12月31日〜翌年1月3日)
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