派手なウエアと攻撃的なゴルフで人気者のジョン・デーリー。何かと問題児扱いされることが多かったデーリーですが、メジャー2勝の実績を持ち、多くのファンから愛されていることも事実です。今回は、破天荒と思われがちなデーリーの本当の素顔に迫るお話です。
正直さゆえに問題児扱いされたジョン・デーリー
1991年の全米プロゴルフ選手権を制してシンデレラボーイと呼ばれ、1995年には全英オープンでも勝利を挙げたジョン・デーリーですが、その後はアルコールにタバコ、ギャンブルに溺れ、そのための借金も膨れ上がってしまい、騒動を起こしては取り沙汰されていました。
そんなデーリーでしたが、アメリカのゴルフファンの間では絶大なる人気を誇り続ける不思議な現象が起きていました。
その秘密を直に探ってみようと思った私は、ある日、パットの練習をしていた彼に近寄り、声をかけました。
するとデーリーが、「インタビューは嫌いだぜ。じっと椅子に座って話をするなんて耐えられない」と言ったので、「それじゃあ、立ち話しましょう」と提案すると、「それならOKだ」ということになりました。
セントアンドリュースが大好きだったジョン・デーリー
ゴルフの聖地、スコットランドのセントアンドリュースで全英オープンを制覇して以来、勝利から遠ざかっていたデーリーに今後の見通しを尋ねると、「セントアンドリュースはオレのゴルフに合っている。アメリカツアーの試合を毎週、セントアンドリュースで開いてくれれば、オレは全部勝てる」と真顔で答え、そんな彼が次第にかわいらしく思えてきました。
そして、「インタビューは嫌いだ」と言ったデーリーがどんどん饒舌になり、こんなことを言ったのです。
「いろんな人から『真人間になれ』と言われ、オレはオレなりに努力して、禁酒して、禁煙して、ギャンブルもやめて、周りに笑顔で接する練習もした。だけど、すっかり疲れてしまった。いつもイライラして、このままでは自分がダメになると思った。だから、もう無理をするのはやめて、オレはオレらしく生きると決めた。やりたいことをやりたいようにやり始めたら、激しかった自分の性格が、最近は少しだけ穏やかになったと思うんだ」
当時の彼は、巷では「荒くれジョン」「お騒がせジョン」などと呼ばれていましたが、そのとき私が見たデーリーは、とても正直に胸の内を明かしてくれた「正直なジョン」「オネスト・ジョン」でした。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)