個性豊かな選手が揃うPGAツアーですが、個性は厳しいPGAツアーで戦い抜くための重要な武器となります。今回は、周囲からのどんな声にも影響されることなく、「我が道」を貫き通した個性派プロのお話です。
悩み抜いた結果、あみ出した方法はまさかの奇策!
アメリカのプロゴルファーは個性的だと言われていますが、一昔前、いえいえ、それよりもっと昔の15年前、20年前のアメリカツアーには本当にユニークな選手が大勢いました。
たとえば、ネイティブ・アメリカン出身のノタ・ビゲイ3世は、とりわけ面白い選手でした。
彼は名門スタンフォード大学のゴルフ部で、あのタイガー・ウッズとチームメイトでした。そのためビゲイには、常に「タイガー・ウッズの元チームメイト」という修飾語が付けられていましたが、彼にはもっと注目すべき見どころがたくさんありました。
それはパッティングです。パットの際、グリーン上でボールがまっすぐ転がるのはストレートライン、右に曲がるのはスライスライン、左に曲がるのはフックラインと呼ばれています。ビゲイは、フックラインは得意なのに、スライスラインはどうしても上手く打てず、悩んでいました。
そしてビゲイが思いついた解決策は、苦手なスライスラインに直面したときは左打ちでパッティングするという荒療治でした。
ビゲイは右利きですが、左打ちで構えれば、スライスラインはフックラインに早変わりします。カーブするラインは、すべてフックラインだと思いながらパットできることになります。そんな奇想天外なパット方法を思いついたビゲイは、パターのメーカーにお願いして、左右両面にフェースが付けられた特注パターを握って戦い始めたのです。
厳しいツアーを勝ち抜くためには信念を持ち続けることが必要
もちろん、そんな両面打ちをしていたのは、ビゲイただ1人でした。
「あんな変なパッティングで入るわけがない」などと最初のうちはずいぶん陰口も叩かれていました。しかし、彼は我が道を信じて進み続け、1999年に年間2勝、2000年にも年間2勝を挙げて、スポットライトを浴びたのです。
パットに限らず、ゴルフに限らず、「我が道」を確立した者は強くなるのだと、あのとき私は知らされました。他人と異なろうとも、奇妙と呼ばれようとも、自信を持って我がスタイルを貫き通す。その大切さを学んだ出来事でした。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)