第150回目の全英オープンの舞台、セントアンドリュースで涙した姿が印象的だったタイガー・ウッズですが、どこにいても、なにがあってもタイガーの人気は絶大。今回はその理由がわかるお話です。
常に相手のことを尊重し、尊敬する姿勢
プロゴルフ界では、長年に渡って二人三脚で歩んできた選手と相棒キャディ、あるいは選手とスイングコーチが、お互いの関係に終止符を打ち、「さようなら」を言うことが時々あります。
有名選手がキャディやコーチと決別すれば、それはビッグニュースになるのですが、一流選手になればなるほど、そういう決別を語るときは慎重に言葉を選びます。
たとえば、タイガー・ウッズがジュニア時代からの長年のコーチだったブッチ・ハーモンと決別したとき、平たく言えば実際は「仲たがい」のようなものだったのですが、それでも彼は、お世話になったハーモンの人間性や人格、コーチとしての資質を決して傷つけない言い方で決別を語りました。
「ブッチと過ごした日々は僕のゴルフの土台として永遠に存在し続けます。しっかりした土台を作ってくれたブッチには、いくら感謝しても感謝しきれない。これからは土台の上を自分の力で築いていきたい」
自分の発言の重さや影響力を知っていることこそが本当の一流
ハーモンと別れたウッズは、その後、ハンク・ヘイニーという別のコーチとともに新たな道を進み始め、次々に勝利を重ねていきました。
しかし、2009年の暮れに起こったウッズの不倫騒動の渦の中、ウッズから離れたヘイニーは、それまでコーチとして知り得たウッズに関するあれこれを、あちらこちらでペラペラ語り始めました。
挙句の果てには、「タイガーのパットの黄金時代はすでに終わった」と言い放ち、暴露本まで出しました。それでもウッズはヘイニーの悪口を決して口にしませんでした。
自分の発言の重さや影響力と知っているからこそ、ウッズは誰かのことを語るときはとても慎重になります。
自分が窮地にあるときでさえ、相手のことを気遣って振る舞うことができるのは、ウッズが自分の立場を自覚しているからであり、心優しいからでもあり、そういうものをすべて備えているからこそ、ウッズは永遠のカリスマなのだと私は思っています。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)