夢のプライベートジェットは選手達のステイタスシンボル!【舩越園子 ゴルフの泉】

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写真:Shutterstock

PGAツアーでの移動距離は日本とは比較になりません。日本では想像し難いことですが、PGAツアーでは移動手段としてプライベートジェットを保有する選手がいます。今回は、ある意味でステイタスシンボルになっているプライベートジェットに関するお話です。

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スターになればプライベートジェットは当たり前!

 今でこそ、アメリカツアーの選手たちがプライベートジェットで移動することは、ほぼ当たり前のようになっています。

 近年では、プライベートジェットを運行する会社がアスリートをスポンサードするようになったこともあり、契約を結んでもらった選手たちは、そこそこ手ごろな費用でプライベートジェットを利用できるようになっているのです。

 しかし、それはあくまでも、ここ10数年に徐々に起こったありがたい変化であり、2000年代のはじめごろまでは、プライベートジェットはトップ中のトップの選手、あるいはとてもリッチな選手だけが利用できる、とても限られたシロモノでした。

早くからプライベートジェットを所有していたアーノルド・パーマー(右)とグレッグ・ノーマン(左) 写真:Getty Images

 早いうちからプライベートジェットを所有していたのは、ゴルフ界のキング、アーノルド・パーマーやオーストラリア出身のグレッグ・ノーマンでした。

 その後、ルイジアナ州一帯の油田を所有する「油田王の息子」と呼ばれていたハル・サットンも自分だけのプライベートジェットを所有し、彼はパイロットも雇っていました。一度、サットンのプライベートジェットの中に入れてもらいましたが、当時のプライベートジェットの機内は思ったより狭く、あまり快適ではなさそうだなと秘かに思った記憶があります。

パイロット資格まで取っていたフィル・ミケルソン 写真:Getty Images

 また、父親がアメリカ空軍の元パイロットだったフィル・ミケルソンは、彼自身もパイロットの資格を取り、プライベートジェットを自ら操縦する大の飛行機好きとして知られていました。

 しかし、プライベートジェットを所有していない選手は、毎回、とんでもない高額を支払って利用するしかなく、それは経済的ではないし、不便でもありました。だから選手たちは、自分がトッププレーヤーになってプライベートジェットを手に入れることを目指すようになり、いつしかプライベートジェットを持つことがステイタスシンボルのように思われていきました。

ローンといえば車じゃなく飛行機のこと!?

談笑するアーニー・エルス(左)とニック・プライス(右) 写真:Getty Images

 2002年ごろのことでした。ある大会の練習日。デビューしたばかりの無名の若い選手が2人で練習ラウンドをしようと1番ティに立ったら、当時の大スターだったアーニー・エルスとニック・プライスがやってきて、「僕らも一緒に回っていいかい?」と声をかけました。
 
 無名の若者たちが「ノー」と言えるはずはなく、もちろん断る理由もありませんでした。こんな大スター2人の胸を借りて練習ラウンドができるのだから、それは「願ってもないこと」であり、「望むところだ」とばかりに、2人の若者は笑顔で頷きました。

 しかし、2番ホール、3番ホールと進んでいくにしたがって、2人の若者はエルスとプライスから少し離れた場所に立ち、コソコソと内緒話をするようになりました。私はその怪訝な動きがどうしても気になり、ついに2人に近づいて、「何の話をしているのですか?」と尋ねました。すると彼らは、ちょっと不機嫌そうな顔をしながら、こう答えたのです。

 「エルスやプライスのようなトッププロたちと、デビューしたばかりの僕らでは、あまりにも差があるって話をしているのさ。だってあの2人はさっきから、プライベートジェットのローンがあと何年残っているとか、そんな話ばかりしているんだ。俺たち2人は、車のローンを払うだけでもアップアップだというのに」

 なるほど。そういうことかと納得できました。当時のアメリカツアーでは、プライベートジェットを所有していた選手は15名ほどしかおらず、マイジェットは一種のステイタスシンボルとなっていたのです。しかし、なかには陸路の移動をあえて望む選手もおり、陸路の移動手段として豪華な車がお目見えするようになりました。その話はまた別の機会に!

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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