カリスマという表現はよく使われますが、その言葉にはどのような意味があるのでしょうか。今回は、ある偉大なプロゴルファーに教えられたカリスマの本当の意味についてのお話です。
カリスマという言葉の本当の意味とは!?
「あの人にはカリスマ性が備わっている」という表現がありますが、タイガー・ウッズの愛人を名乗る女性が次から次へと登場して、世界中が大騒ぎになった2009年末から2010年にかけての数か月間、この「カリスマ性」という言葉はアメリカのゴルフ界に頻繁に登場しました。
「タイガーは永遠にゴルフ界のカリスマだ」と言う人がいれば、「タイガーのカリスマ性は、まやかしだった」と落胆する人もいました。「かつては本物だったとしても、もはやタイガーのカリスマ性は消滅した」と批判する人もいました。
しかし、ウッズのカリスマ性を取り沙汰していた人々は、果たしてカリスマ性というものの正体を知っていたのでしょうか。もちろん私にもカリスマ性の正体は今でもよくわかりません。
パーマーの所作に感じた本当のカリスマ性
でも、ゴルフ界の一流選手たちを間近に眺めていると、時おり、「ああ、これがカリスマ性というものなのかな」と思うことがあります。
まだ17歳だった石川遼がアメリカツアーに推薦出場し始めた2009年の春。ゴルフ界のキング、アーノルド・パーマーと生まれて初めて“ご対面”することになった石川選手は、ひどく緊張して頬をこわばらせながらクラブハウスの裏手の小部屋の中へ入っていきました。
数分後。2人は一緒に外へ出てきて、待ち構えていたカメラマンたちの放列に向かってポーズを取りました。石川選手の表情は、さっきまでとは別人のような安堵の笑顔に変わっていて、その石川選手の肩をパーマーは優しく抱いて、さらなる笑顔を引き出してあげていました。
パーマーが立ち去ったあとも石川選手は夢見心地で、キングとの対面を振り返りました。
「パーマーさんは僕が思っていた以上に優しい人でした」
若い人、未熟な人、弱い人を見かけたら、その人を優しく包んで笑顔をもたらす。そんな魔法のような不思議なパワーこそが、きっとカリスマ性なのだろうと思いました。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)