女子ゴルフの馬場咲希の全米女子アマ優勝が話題になりましたが、最近は日本のゴルフ界にも若いスターがどんどんと現れます。その先駆けとも言えるのが石川遼だったのではないでしょうか。彼も30歳を超えましたが、今回はそんな彼がアメリカに挑戦し始めた頃のお話です。
若さと勢いだけではPGAツアーには通用しない
高校1年生にして日本のプロの試合で優勝し、日本の国民的スターになった石川遼選手は、その後プロ転向し、子どものころから憧れていたアメリカツアーの大会にも2009年から挑戦を始めました。
とはいえ、それは石川選手の初渡米だったわけではなく、彼がアメリカでゴルフの試合に出た経験はジュニア時代にもありました。
中学生のとき、全米ジュニアゴルフ協会が主催する5試合に挑戦。当時の石川少年の目には、日本とアメリカのゴルフ場のレイアウトやデザインの違い、芝の違いといったものをきっちり見分ける能力は、「まだ備わっていませんでした」と彼は明かしてくれました。
「試合のとき、風が吹いていてすごく寒かった。でも僕はちゃんと着込んでいなかったり、逆に着込みすぎていたり、ウォーミングアップもできていない状態でスタートしたりしていて、コースや芝に対しては、まだあまり何も感じていなかったのだと思います」。
プロになり鋭さを増していった石川遼のまなざし
プロになり、日本で早々に勝利を重ねた上で、あらためてアメリカにやってきた石川選手は、2009年の春、アメリカツアーの大会に初挑戦したとき、「ジュニア時代には見えなかったものが見えた」と、驚きまじりに話してくれました。
「芝のしつこさ、グリーンの芝目の強さ、18ホールそれぞれのホールごとの特徴、そして僕以外の選手たちのさまざまなワザ。昔は見えなかったものが、今回はよく見えました」
それは、プロになった石川選手の五感がジュニア時代より格段に磨かれた証だと思いました。
より鋭くなった目で「見て覚え、見て備え、そして実行する」ことこそが、プロフェッショナルのワザ。そのワザを可能にするものは、経験によって磨かれた鋭い五感、鋭い目であることを、石川選手の話を聞きながら再確認させられました。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)