どんな職業でも、一流と呼ばれる人たちには同じように備わっているものがあるのではないでしょうか。今回は、老舗ホテルのバーカウンターに立ち寄った際に、チーフバーテンダーとかわしたゴルフの話題から感じたゴルファーとバーテンダーの共通点に関するお話です。
ゴルファーもバーテンダーも手首使いが鍵!
アメリカに住んでいた25年間、私は日本へ一時帰国したときは、いつも都心のホテルにしばし滞在していました。
お酒の代わりにコーヒーをこよなく愛する私は、ある夜、老舗ホテルのバーカウンターにポツンと座り、シェイカーを振るバーテンダーを眺めていました。「チーフバーテンダー」という肩書きで、ベテランであることは一目瞭然でした。
シェイカーを振るコツを尋ねると、チーフバーテンダーは「手首の返しです」と答えました。
「手首の返しですか?ゴルフみたいですね」と話が弾み始めると、バーテンダーも饒舌になり、「1段振りから3段振りまであるんです」と教えてくれて、凝視されていることを承知の上で、胸を張り、高らかにシェイカーを振って見せてくれました。
その姿には、プロフェッショナルとしての気概と誇りが感じられました。若くて未熟なバーテンダーと何が違うのかと尋ねてみると、チーフバーテンダーいわく、「振り方はそれぞれのオリジナルでいいんです。大切なのは人間性です」。
それを聞いて、ますますゴルフみたいだなと思えて、なんだか嬉しくなりました。
一流と呼ばれるには技術以外の人間性が必要になる
例えば、タイガー・ウッズはクラブを振るだけで絵になる選手です。また、舌を出しながらスイングするリー・ウエストウッドやスイング軌道が8の字を描くジム・フューリックは個性豊かな振り方ですが、それぞれ頂点に立ちました。
大きく優しい人間性が伴っているチャンピオンたちをバーテンダーに例えるなら「チーフ」級です。世界一のアメリカツアーを例えるなら一流のバーカウンターみたいなもので、そこに立ち、人々の視線を一身に浴びながら堂々とプロの技を披露するという共通点があります。
素敵なオーラを醸し出せるかどうかは、その人、その選手の人柄次第なのかな。真夜中のホテルのバーで、そんなことを考えました。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)