悔しさを噛み締めた経験は誰にもあると思います。悔しさをどこにどうぶつけたらいいのか、どうやって乗り越えたらいいのか。迷ったこと、苦しんだ経験は、きっとみなさんも何度もあったと思います。今回は、ある選手の悔しさへの向き合い方のお話です。
勝つために何が足りないのかを考えた
一口に「悔しい」と言っても、いろんなシチュエーションにおける、いろんな「悔しい」がありますが、アメリカのPGAツアーで私が見て本当にびっくりしたのは、ジャスティン・トーマスの「悔しさへの向き合い方」です。
トーマスはPGAツアーの中心選手ですが、デビューした当初は、体の線が細くて弱々しい感じでした。実際、新人だった2015年は、勝ちかけては惜敗することの繰り返しでした。
ところが、そんな彼が翌年から少しずつ勝ち始め、2017年には全英プロで松山英樹を抑え込み、メジャー・チャンピオンになりました。その後も次々に勝利を重ね、今ではPGAツアー通算15勝のトッププレーヤーになっています。
その陰には、どんな努力があったのだろうと不思議に思っていたとき、すごいことに気が付きました。
一流選手になる人は着眼点が違う
トーマスは、ライバルがビッグな大会で優勝争いをしていたら、たとえ自分は予選落ちしていても、わざわざ試合会場に足を運んで、ライバルが優勝する瞬間をあえて目の前で見て、その姿を脳裏に焼き付けていたんです。
「なんで、わざわざ?」と尋ねると、トーマスは、こう答えました。
「ライバルが大観衆の拍手歓声を浴びて勝つ姿をこの目で眺めるのは、とんでもなく悔しい。だけど、その悔しさを自分の五感に植え付けることで、それが僕の起爆剤になり、エネルギーになるんです」
スゴイなあと思いました。そういうことをやったからこそ、彼のメンタルは鍛えられ、強くなったということですよね。
悔しい気持ちは、乗り越えようとするのではなく、噛み締めて利用する。
まさに、一流選手ならではのワザです。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)