今は米ツアーを主戦場に戦っている渋野日向子ですが、彼女がブレイクしたのはなんと言っても2019年の全英女子オープン。世界中のメディアが彼女を取り上げましたが、今回は渋野日向子という選手がこれまでに見たことのない選手だというお話です。
日本という枠を超えた渋野の器
2019年の夏、渋野日向子が全英女子オープンを制し、メジャー・チャンピオンに輝きました。日本人としては1977年の樋口久子以来、実に42年ぶりの快挙でした。
でも私は、彼女の勝利は「日本」という枠を超えて、世界の誰もやらなかったこと、誰もやれなかったことをやってのけた「初」の快挙だと思いました。
あの大会の最終日。スタートホールの1番のティグラウンドに立った渋野は、それまでの3日間と同じように屈託のない笑顔でスタンドやロープ際のギャラリーに挨拶をしました。日本人らしく一礼し、それからセットアップに入っていきました。
ティショットを打って、フェアウエイ方向へ歩き出してからも、左右のロープ際に立つギャラリーの方へ視線を動かしながら、小さく手を振り、にっこり微笑み、そうやって前方へ進んでいきました。
世界を魅了したシブコスマイル
そんな彼女の様子を見て、アメリカのTV中継のアナウンサーは、「メジャーの最終日最終組の選手が、1番ティであんなふうにスマイルを見せ、あんなふうにギャラリーに手を振って歩くなんて、これまで見たことがありません」と、驚いていました。
究極は最終ホールの18番。バーディーを奪えば優勝、パーならプレーオフという緊張きわまりないシチュエーションの中、これからセカンドショットを打とうとしていた渋野は、満面の笑顔を見せながらキャディと会話していました。
「ここでシャンクしたらカッコ悪いよね」という話をしていたそうですが、メジャーの優勝争いの大詰めの決め手の1打を打つ直前に、笑顔でそんな会話をした選手は、私もこれまで「見たことがありません」でした。
つまり彼女は、これまでの常識や前例の中では「見たことがない」ような仕草や言動と笑顔の中で、見事にメジャータイトルを手に入れた「初」の選手なんです。
渋野は、いろんな意味で期待ができる大型で大物の選手ですね。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)