今やスペインだけでなく世界のトッププレーヤーとして実力も人気も高いジョン・ラームですが、その気性の荒さは彼を象徴する一部です。そんな彼が、いわば彼らしくない振る舞いの後に起きた出来事に関してのお話です。
優勝間違いなしの位置からまさかの棄権
2021年の全米オープンを制覇したのは、スペイン出身の26歳、ジョン・ラームという選手でしたが、勝利の陰には、ちょっぴり不思議な出来事がありました。
ラームは、全米オープンの2週間前に開催されたアメリカツアーのメモリアル・トーナメント3日目を、2位に6打差の単独首位で終え、大会2連覇に迫っていました。
しかし、大会関係者からPCR検査の結果が陽性だったことを告げられ、即座の棄権と10日間の隔離生活を求められたのです。それは、まさに青天の霹靂でした。
日ごろからラームは感情の起伏が激しいことで知られているのですが、そのときのラームは、2位につけていた選手に「明日も頑張れよ」と声をかけると、係員の誘導に従って、静かに去っていったのです。
あのラームが、なぜ、あんなにも素直だったのだろうと、居合わせた関係者は不思議に思ったほどでした。
陽性反応も素直に受け入れポジティブに考えたラーム
それから10日後、隔離生活を終えたラームは、ギリギリセーフで全米オープン出場が叶い、トッププレーヤーばかりがひしめき合った大混戦を制して、見事、メジャー初優勝を挙げました。
優勝スピーチで、ラームはこんな言葉を口にしました。「検査結果が陽性で棄権しなければと告げられたとき、僕はそりゃあ驚いて、がっかりしました。でも、すぐに考えが変わりました。幸いにして家族はみな無事だし、僕も無症状だったことに感謝したのです。そして、これはハッピーエンドの物語なんだと、すぐに思えました。これから何かいいことが起こる。そんな予感がしたんです」
その予感は現実となり、ラームは2週間後にメジャー・チャンピオンになりました。何かいいことは、本当に起こったのです。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)