PGAツアー10年目を迎えている松山英樹は、周囲の選手やキャディたちとは英語で談笑しているのですが、公の場では必ず通訳を伴っており、彼自身が英語を口にすることはまずありません。今回はそんな彼の英語力に関するお話です。
キャディさんがよく使う「ファー!」。正しくは「フォア!」
今年のマスターズのチャンピオンズディナーでは松山英樹の英語でのスピーチが話題になりましたが、彼が本当はどのぐらい英語が喋れるのか、どんな英語を話すのかを知る機会はほとんどありませんでした。あるとき、そのチャンスに巡り合いました。
あれは2015年8月のブリヂストン招待という大会の練習日でした。
一緒に練習ラウンドをしていたインド出身のアニルバン・ラヒリのティショットが大きく右に飛び出した瞬間、松山は右手で右方向を大きく指し示しながら、「フォア、ライト!」と大きな声ではっきりと叫んだのです。
日本のゴルフ場では、ショットが右や左に大きく曲がったとき、危険を知らせて打球事故を防ぐ目的で、キャディさんやプレーヤーが「ファー!」と大声で叫びます。
しかし、あの「ファー」という叫び声は、実を言えば、英語で「前方」を意味する「フォア」が日本では「ファー」に変わってしまったもののようで、アメリカのゴルフ場では「ファー」とは言わず、「フォア」と叫びます。
「R」の正しい発音ができるのは英語が喋れる証!?
ショットが右に曲がった場合は、「フォア」の後に右を示す「ライト」を付けて「フォア、ライト」と叫び、左に曲がった場合は左を示す「レフト」を付けて「フォア、レフト」と叫ぶのです。
松山選手は、一緒に回っていたラヒリのショットが右に飛び出し、落下地点付近に大勢のギャラリーがいたため、「右前方にいる方々、気を付けて」という意味で咄嗟に「フォア、ライト!」と叫んだのです。
「フォア(Fore)」も「ライト(Right)」も、日本人には概して発音しにくい「R」を含んだ単語ですが、松山選手の発音は驚くほどきれいで本格的で、とてもびっくりさせられたことを、今でもよく覚えています。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)