過去の行いを反省した松山英樹【舩越園子 ゴルフの泉】

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松山英樹 写真:Getty Images

過去の行いを素直に反省することは、なかなか難しいことです。今回は、2021年にマスターズ王者となった松山英樹が、2017年に世界ランク1位に挑戦していた時のお話です。

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謙虚な松山英樹が発した反省の言葉

 2017年の春。日本の松山英樹は「今週、優勝すれば世界一になる」という大きな可能性と向き合っていました。会見に呼ばれた松山選手に、アメリカ人記者たちは、次々に質問しました。

 「自分が世界のエリートの1人として、やれると自覚したのはいつですか?」と問われると、松山選手は「やれるという自信は今でもあんまりないけど、自分のベストを出し続けることが大事だと思います」と答えました。謙虚で当たり障りのない返答に、アメリカ人記者たちは無表情で無反応。そんな静かなやり取りが続いていました。
 「先日の大会で、バックスイングの途中、ギャラリーが叫び声を上げたけど、アナタは平然とショットしていた。周囲が気にならないのは昔からですか?」

 そう尋ねられた松山選手は「内心はむちゃくちゃ怒ってますけど、それが見えないように頑張ってます。やっぱりドラールの時に自分の行ないによって人に嫌な思いをさせたので、そういうことがないように頑張ってます」

 やっと本心を語り始めた松山に、アメリカ人記者たちは目を輝かせ始めました。

多くの経験が悲願のマスターズ優勝に導いた 写真:Getty Images

 松山選手が言った「ドラールの時」とは、フロリダのドラール・リゾートで開催された2014年の世界選手権大会のときのこと。あるパー3ホールでパットを外した松山選手は腹立ち紛れにパターでグリーン上をガツンと一撃。グリーン面には、ちょっとしたディボットができましたが、気付かなかったのか、彼はディボットを直さず、次のホールへ行ってしまいました。

 しかし、パー3ホールのティグラウンドから一部始終を目撃していた後ろの組のイアン・ポールターが、その夜、事の次第を明かし、松山をバカ呼ばわりするツイートを発信して激しく批判。米ゴルフ界は大騒ぎになりました。実際、後続組の選手のライン上に松山が作ったディボットがちょうど来てしまい、ルール委員を呼んでルール委員がディボットを直すなど後続組は後始末に追われたのです。

失敗を反省することで強くなる

 翌朝。松山選手は後ろの組にいたポールターらに謝罪し、それで騒ぎは収まりました。しかし、2017年の春に世界一になるチャンスを控えた松山が、3年も前のツイッター事件のことを自ら持ち出し、反省の念を明かしたことは、米ゴルフ界では「ちょっとしたニュース」になりました。

 人間は失敗することで強くなると言いますが、正しくは「失敗を反省することで強くなる」ですよね。

 「頑張ってます」と言った松山がちょっぴり可愛らしく見えました。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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