プロと二人三脚でトーナメントを戦うキャディは勝敗を左右する大きな役割を担っています。その仕事は的確なアドバイスにとどまらないというキャディに関するお話です。
タイガー・ウッズにとってもマスターズの優勝争いでは緊張する
2021年のマスターズを制した松山英樹は、最終日は「最初から最後まで緊張しっぱなしだった」と振り返っていましたが、どんな百戦錬磨の選手でも、王者タイガー・ウッズでさえも、優勝をかけて臨むマスターズ最終日は究極の緊張状態になるようです。
2019年マスターズの最終日、復活優勝をかけて1番ティに立ったウッズは、緊張のあまり、序盤に2連続ボギーを喫しました。そんなウッズの気持ちをほぐすために、相棒キャディのジョー・ラカバはウッズに、あるひと言を囁いたそうです。
そのひとことのおかげか、タイガーは11年ぶりのメジャー優勝、14年ぶりのマスターズ優勝を果たしました。
優勝会見で「その一言は…、僕の口からは言えないよ」と笑うばかりでしたが、ラカバが会話の内容をアメリカ人メディアにこっそり明かしました。
キャディからの言葉に思わず笑ってしまったタイガー・ウッズ
ウッズ復活優勝のカギになったラカバのひと言は、こんな内容でした。
「タイガー、力み過ぎたらダメだし、締め過ぎてもダメだってこと、キミはよく知ってるよね?」
ラカバから、そのひと言を聞いた直後に、そのままトイレに入ったウッズは、ラカバの囁きを何度も咀嚼して、「フフフと笑ってしまった」そうです。
そうしたら気持ちが楽になり、緊張から解放されて好プレーを披露した末に奇跡的な復活優勝を飾ったのです。
「ジョーのひと言が心の転機になった」。後日、ウッズは嬉しそうに、そう振り返りました。
マスターズ優勝を支えたキャディたちの役割や流儀はそれぞれ異なります。でも、キャディの存在、キャディの言動がとても重要だということを、ウッズや松山の優勝物語を読み解く中で、あらためて感じさせられます。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)